ピンクシボレー
先日の「ベリーニ」、「ハリーズ・バー」の話から。
以下、また福西先生の本より。
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イタリアでは、このヴェネツィアの「ハリーズ・バー」から20年ほど遅れて、1953年、フィレンツェにも「ハリーズ・バー」が生まれた。オープンにあたっては、やはりパリの「ハリーズ・バー」に応詔をとったという。
このフィレンツェの店と、ヴェネツィアの店のあいだに、経営上の横のつながりはない。それどころか、二軒の「ハリーズ・バー」は、お互いにライバル意識が強い。
それは、フィレンツェの店のオリジナル・カクテルが、「ティツィアーノ」と名付けられていることがうかがい知ることができる。レシピは、赤いグレープ・ジュースを、イタリア産の発泡酒スプマンテで割る、というかたち。ヴェネツィアの店が、イタリア北部特産の桃と、同じく北部特産のプロセッコという発泡酒を材料に使うなら、こちらはキャンティ・ワインの本場の意地を見せ、ぶどうのジュースで立ち向かおう。発泡酒ワインも、イタリアを代表するスプマンテでいこう。ネーミングのほうも、むこうが画家名でくるなら、こちらも画家名で応戦しよう。そんな魂胆が見え見えだ。
ティツィアーノとは、ジョバンニ・ベリーニの弟子として育った画家ヴェチェッリ・ティツィアーノのこと。その名を付けたティツィアーノというカクテル、残念ながら、親方名を冠したベリーニほどは人気がない。
ヴェネツィアのハリーズ・バーに行って、このティツィアーノを注文すると、「ああ、ベリーニのグレープ版ですね」と、ニヤリとしながらつくって出してくれる。そのニヤリのうらには、今のひと言で軽くいなしたから、まァつくって出そうか、いう姿勢のぞいて見える気がする。
フィレンツェのハリーズ・バーでは、「ティツィアーノ」のバリエーションとして、さらに「レオナルド」というオリジナル・カクテルも店のメニューに加えた。
これはいちごが材料。熟したいちごをブレンダーでピューレにし、それにスプマンテを加え、混ぜる、というもの。
ヴェネツィア生まれの「ベリーニ」のバリエーションともいえる。カクテル名のレオナルドは、ご当地トスカナ州出身のレオナルド・ダ・ヴィンチにちなんだもの。
フィレンツェで、この「レオナルド」の味を知った客が、ヴェネツィアのハリーズ・バーでこれを注文すると、バーは「ベリーニ」が売りだから、あまりおもしろくはない。でも、客の前で不快感を表情に出せないから、そこは腹でグッと押さえて、「当店では、レオナルドではなく、ロッシーニという名でお出ししていますが、それでよろしいですか?」とお伺いを立てる。ロッシーニは、ヴェネツィアから近いマルケ州ペザーロ町出身のオペラ作曲家。フィレンツェ生まれカクテル「レオナルド」を、ヴェネツィア寄りの地出身の「ロッシーニ」に名称変更をしてしまう。
『読むカクテル百科』 福西英三著より
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ベスパでは、いちごとシャンパンを合わせて作りますが、「ピンクシボレー」と呼んでます。
こちらは、「サントリー2001」というカクテルブックから抜粋してます。
この「ピンクシボレー」は、タンブラーを用い、氷も入るスタイルです。
それをヒントに「ベリーニ」も、今のスタイルにしました。
「レオナルド」でも「ロッシーニ」でもなく、「ピンクシボレー」と言ってる私達は、少しひねくれてますね(笑)
ハリーズ・バーの意地の張り合いも面白いと思います。
カクテルの名前やいわれは、何が正しいというのはないと。流動的なもので、日々カクテルは生まれたり変化していくものだと、私は思います。
Pink Chevrolet